初めての四国

出張で四国に来ています。
生まれで初めて訪れる土地です。
「竜馬がゆく」や、古いB級映画でちと憧れていた土地でした。
出張前日が連休だったもので、一日早い上陸でした。だいたい、自分は朝が弱いし、翌日がのんびり出来ます。
本州四国連絡橋というのも初めて渡りました。
電車の旅だったので、ハンドルを握りながらの運転と違い、きょろきょろ出来ます。
大きな橋を渡るとき、ドライバーというものは気の毒な存在かと思います。
特に、大きな橋ほど、通行料金も高かったりしますし。
今回は電車のお陰で、大人気なく思う存分きょろきょろ出来ました。
漱石が生きていたら、三四郎とこの橋を渡る場面でもあったら、冒頭の場面もちと異なったかもしれません。漱石と四国では、坊ちゃんを思い出すのが普通でしょうが。
鉄道の旅ですと、どうもあの場面を思い出してしまうんです。
以下、夏目漱石の三四郎より引用。(青空文庫さんのテキストより)

――あなたは東京がはじめてなら、まだ富士山を見たことがないでしょう。今に見えるから御覧なさい。あれが日本一《にほんいち》の名物だ。あれよりほかに自慢するものは何もない。ところがその富士山は天然自然に昔からあったものなんだからしかたがない。我々がこしらえたものじゃない」と言ってまたにやにや笑っている。三四郎は日露戦争以後こんな人間に出会うとは思いもよらなかった。どうも日本人じゃないような気がする。
「しかしこれからは日本もだんだん発展するでしょう」と弁護した。すると、かの男は、すましたもので、
「滅びるね」と言った。――熊本でこんなことを口に出せば、すぐなぐられる。悪くすると国賊取り扱いにされる。三四郎は頭の中のどこのすみにもこういう思想を入れる余裕はないような空気のうちで生長した。だからことによると自分の年の若いのに乗じて、ひとを愚弄《ぐろう》するのではなかろうかとも考えた。男は例のごとく、にやにや笑っている。そのくせ言葉《ことば》つきはどこまでもおちついている。どうも見当がつかないから、相手になるのをやめて黙ってしまった。すると男が、こう言った。
「熊本より東京は広い。東京より日本は広い。日本より……」でちょっと切ったが、三四郎の顔を見ると耳を傾けている。
「日本より頭の中のほうが広いでしょう」と言った。「とらわれちゃだめだ。いくら日本のためを思ったって贔屓《ひいき》の引き倒しになるばかりだ」
 この言葉を聞いた時、三四郎は真実に熊本を出たような心持ちがした。同時に熊本にいた時の自分は非常に卑怯《ひきょう》であったと悟った。

コメント

  1. マリィ より:

    初めて讃岐うどんを食べたときの感動をいまだに覚えています。(小学生の時だったんですけどね。)あまりに美味しくて。向こうはすごくシンプルに頂くんですよね。大変だとは思いますが、いろんなところに出張ってちょっぴり憧れてしまいます・・・。四国はいいところですよ!

  2. SUKIYAKI より:

    旅好きの一人身ですし、これくらいが丁度いいんですヨ。
    デスクワークだけですと、お尻が蒸れるだけです。
    ガァ
    普段はタヌキうどんばかりで、本場モノのサヌキうどんを頂きたいです。四国では何処でも頂けると思ったら、そうでもないようで。
    夕方頃会社に電話をしたら、来週はアトランタへの出張があるかもしれないとのことでした。
    なんか、こんなことばかり綴っていると、ビジネスエリートなのかといった誤解を生みそうですが、ドジとボケで渡り歩いております。>マリィ@子猫さん