失って気付く

先月の母の他界以降、失うものが色々と。
先ずは、常連だったお店の店主が突然引退とのこと。

柴又に引越し、かれこれ五年以上通い続けた地元の喫茶店なのですが、昨年の一月にコロナ関連でちょっとした行き違いがあり、全く通っていませんでした。
「コロナが落ち着いたらまた行きます」とは伝えていたものの、未だに落ち着いていたとも言い切れぬ状況で。
ただ、駅前のスーパーに寄る際は踏切の向こうでお店のシャッターが開いているか確認しがちでした。
そして、今年の四月からお店はシャッターを閉じたままで、何があったのか気になりつつ。

七月上旬の一度目の帰省から柴又に戻ると、珍しくシャッターが半開きでした。
直ぐに自宅に戻り、北海道のお土産なトラピストのクッキーを持ち出し。
お店へ行くと、改装作業中でした。
そして、久し振りに店主と再会。

一年半ぶりで話題は豊富だったものの、改装作業が忙しそうで手短な会話しか出来ず。
店主は近々引退してしまうそうで。
これは残念でした。

この五年、自分は無職期間が長く一人暮らしでもあるので、このお店での会話がけっこう楽しみで。
悪天候の平日とか、お店が暇そうな場面を狙って伺いがちでした。
昭和レトロなコンセプトのお店はBGMにも拘りがあり、誰からも忘れ去られた様な曲が流れると、これが懐かしく話題のネタになったり。
やむにやまない事情での引退だそうですが、それを知っている方は少なく。
大好きだったアルバイトの女の子は既に引退してしまったそうで。

今月の上旬に、店主の正式な引退発表がSNS上でありました。
常連さん達は皆驚いていました。コロナ禍で数年来れなかった常連さんも少なくなく。
お店が残るのは嬉しいですが、自分にとっては店主さんとアルバイトさんの向こう側にあるお店でした。
これは多くの常連さんも同じ思いかと。
まぁ、元々安いお店では無かったですし、物価の上昇や続く無職でおいそれと行ける立場ではないので、仕方がないと諦めるようにしています。
会おうと思えばお店以外でも会えますし。昨夜は「いまテレビで昭和の特集やってるヨ」と突然メッセージも飛んできたりで。(この番組面白かったです)

もう一つ失うのが実家です。
一人暮らしの母が亡くなったので仕方がないことです。
十年前に叔母は実家を買い取っていて、その際には叔母から気遣いの言葉をかなり頂けて。
自分は母や実家のサポートを全くしてこなかったですし、何も言える立場になく。

現時点でも家の周りの木々は伸び放題で、このまま放置したら恐ろしい事になりそうです。
居住者無き後の家というのは、実際に劣化が早いですし。

元々この実家も自分が高校を卒業して上京後に建てていて、自分が暮らしたような期間はとても短く。思い入れは少なかったです。
ただ、大学時代は毎年の様に帰省していて、ここに帰るという感覚はありました。
帰れば友人達とも再会出来ましたし。

実家が無くなるというより、帰省する場所や機会が無くなる方が重く。
ただ、あの家を片付けたり処分したりする叔母は、いましばらく大変だと思いますし、小さな傷心に浸かっている自分など考えが甘いだけで。

世間の人は実家を失う感覚がどんなものなのか検索したところ、寂しさの意見も多かったのですが、処分の大変さな意見も少なくなく。
みんな同じなんだなぁと。
自分の場合は生まれてから独り立ちするまで幾度も引越しを経験しているし、まだ思いは軽い方なのかも知れません。

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