自分は大食いで、何を頂くにしても大盛派。
以前勤務していた研究開発セクションの社員食堂では、おばちゃん達から「あら、大森さん」と呼ばれ、注文せずとも大盛が。
あの建物から遠い本社に異動した数年後、何かの打ち合わせついでに食堂へ寄った際もあの名で呼ばれ。
「違います!自分はこの社員証の通り〇〇です!」と、嘗ての毎度のやり取りを懐かしみ。
「いきなり居なくなっちゃって、どうしたのか心配してたの。でも、出世したって噂聴いたから嬉しかったの」
自分なんかより優秀な技術者があれだけ沢山訪れた食堂なのに、気にしていてくれてたとは。
どうにも、幼少期は空腹感を覚える期間が長かったようで「食べられるときに食べておけ」な発想になりがちなのかなあと。
最近のニュースでも似たような記事を読んだばかりでした。捨て猫を拾ってきてしばらくたった頃、猫の食欲が落ちてしまい、飼い主が動物病院に連れて行ったそうです。
何も異常の無い猫を診た獣医さんは優しく答えたそうです。
「もう、空腹の心配が無くなっただけです。安心しているのでしょう」そんな話でした。
しかし、どうにも自分の大食い癖は治まらず。
なんじゃこりゃ。
しばらく前から続く身内の認知症、高齢であるが故か症状が悪化しているらしき連絡が。
食事は自宅に届くお弁当が主だそうですが、夕刻を過ぎても届かないとの話が。
電話の相手は咄嗟に閃き「台所とかに、食べ残しの器が残っていない?」と。
実際、受話器越しに「あっ!」という声が響いたそうです。
少し前に食べたのを既に忘れていたらしく。
自分でも昨日の夜食が何だったのか覚えていない場面は少なくないですが、直前に食べたか否かまで忘れるようなことはなく。
認知症は直近の記憶も失うどころか、満腹感まで忘れてしまうのかな。
倉本聰さんが脚本を綴った「ライスカレー」というドラマの一場面を思い出してしまいました。
あらすじは、関東の外れにある漁港近くの高校を卒業した若者二人が、カナダで飲食店を営むOBから「カレー屋を一緒に始めよう」との誘いから始まります。
しかし、現地に到着してみると、誘った本人は女生と駆け落ちして連絡先も分からず。英語も使えぬ若者二人は漂流の様な旅を続ける羽目に陥り。
高校の野球部で信頼関係のあった若者二人は正反対の性格。方やまじめでコツコツと信頼を広げる男と、お調子者で勢いだけの男と。
後者の駄目な孫(息子?)の行く末を案じるお祖母ちゃんは、意外な末路を。孫を思ってか、大量のカレーを鍋で作ったものの、一人短時間で平らげてしまったそうで。
訃報が届いた孫はすぐさま帰国し、集まった沢山の香典を握りしめ夜の街へ出るのですが、何処かの呑み屋で酔いつぶれてしまい、全財産奪われる羽目に。雨の路上に散りばめられた空っぽの香典袋、実に最悪の展開です。
最終回まで目を離せない展開でしたし、役になりきる俳優さんたちが「いい味」出していて。
純粋なマドンナ役を演じた藤谷美和子さんも、とても素敵だったので、その後の私生活の悲劇は残念過ぎたり。
あのお祖母ちゃんの死に物狂いな食べっぷりも映像で衝撃的でした。
と申しますか、食べた記憶よりも満腹感とか食欲とかいった五感さえ歳をとると忘れてしまうものなのか?といった疑問まで。
実際にあり得る出来事だと今夜知った次第です。
身内には以前から冗談っぽく伝えていたんです。「うちの嫁は朝から何も喰わしてくれない」なんてボケ方はお互いしないようにと。
残念ながら、ほぼその通りになってしまいました。
元々、不都合とか記憶違いがあると、相手のせいにしがちな性分が更に進んでしまったとも思っています。
先ずは自分を疑うべきなのに。
幸い、自分は遠く離れた場所で暮らしているので、地域の専門家に身内を任せっきりです。ここまで、自分の善意も悪意に受け取られてしまった場面が幾つもあり。
専門家の方は、話を聞く限り面倒なことほど率先して解決してくれているそうです。赤の他人だというのに、そこまでやってくれて。
何かの機会があれば、ちゃんと自分からもお礼を伝えねばと。
追記:
認知症で食事したことを忘れる件、Webで検索したところよくあることの様子で対処法まで。
「認知症の人の対応~ごはん食べていない」によると『私たちの満腹感や空腹感は、脳下垂体の満腹中枢と摂食中枢が関与しています。食事を摂ると、血中の糖質、脂肪、インスリンが増加し、満腹中枢が刺激され、満腹を感じ、同時に摂食中枢が抑制されて食べることを止めます。また、血中のこれらの栄養素が少なくなると、摂食中枢が刺激され、満腹中枢が抑制され、空腹感を訴えて、何かを食べようとします』とのこと。
更に『認知症の人の食事に纏わる話で多いのが食べたことを忘れ「ごはん食べていない」と再度要求することです。この原因として、満腹中枢の機能が働かなくなり、いくら食べても満腹にならず、摂食中枢が刺激され、どんどん食べたくなることが考えられます。また、食べたことも忘れてしまうエピソード記憶の障害も加わり、「食べてない」と訴えるようです』らしく。
脳科学の世界で、そこまで解明されているのも凄いと思えたりなのですが、単に記憶機能の衰えだけではないんだなぁと。
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