仕来り

未経験の分野で不思議な仕来りが残っていたりです。
例えば、中学の体育会系の部活では先輩の道具を新人がメンテしたり。個人的には自分のモノは自分で管理すべきだと思っています。

場面は変って、社会人五年目くらいの頃の思い出です。都心の高層ビルを数フロア借りていた本社で当時の自分は働いていました。
バブルが弾けて数年目の時期。高層ビルは某証券会社の東京支店の所有で、ある日のこと地下駐車場の入口付近に真っ赤な絨毯が敷き詰められていて。
珍しい光景に何事か?と思っていたのですが、その夕刻のニュースで理由を知りました。株の損失補填問題で大規模な捜査がその日にあったそうです。それを迎え入れる赤い絨毯だった様子で。
もしかしたら、証券会社のお偉いさんとかも当日は訪れていたのかも知れません。
あれは時代劇の再現のような場面でした。
この時代でもこんな仕来りがあるんだなぁと。

ここしばらくで気になった仕来りです。
11名程の会社の実質トップの上司と、自分は挨拶以外口を聴く場面が入社以来二ヵ月ほど無かった記憶です。
ある日のこと、その上司と一緒に現場に出ることに。
車で出発前、上司曰く「軍手は積んだか?」と。
「はい、いつもポケットに入れています」と答えると「馬鹿言ってんじゃねぇよ、おまえの分何て聴いてねえよ」と。
何でも、この上司と同行する際は新品の真っ白な軍手を上司の分用意しておく必要があるそうで。

現場に到着し、作業を始めようとしたところ「これ貸せ」と自分の小道具を渡すことに。
作業で必要な小道具はウエストバッグのポケットに入れているのですが、その幾つかが抜き取られました。
しかし、作業が終わり会社に戻っても貸した小道具は返ってこず。
同行していた先輩社員に聴いてみると毎度のことらしく、仕方ないので車に転がっていた小汚いのをポケットに戻すことに。

こんな場面が幾度か続きました。貸していた物が見つかっても、ボロボロにされていることも。
自分は利用頻度の高い小道具を二つ持参するようにしています。場所も取らないし、無くしたら仕事にならないし。通販で取り寄せたピカピカの新品は自分でも手を付けていなかったのに。
毎度の如くその上司は「貸せ」なのですが、さっき貸したばかりの物が返ってもいないのにまた「貸せ」は流石に迷惑で。
「さっきお貸しした分はどうなったのですか?」。
それからまた口を聴いてくれなくなりました。

現場に向かう車の中では、ハンドルを握る先輩社員が助手席の上司からお説教を永遠に受けていたりでした。
これは聴いている自分も不快な作業で。
社内でも、皆の居る前で先輩社員が差別発言を上司から受けたり。本人は面白がっている様子ですが、その場の誰もが笑いもリアクションもせず。勿論止めもせず。
嫌なムードに包まれ始めると、何かを満たされた上司は古い演歌を鼻歌交じりで。
シュールである。

職場でナンバーツーの上司は比較的常識人だったものの、この上司の一言で普段の意見とコロッと変わったり。
現場の仕事の世界とは、これが当たり前なのかな?
だとしたら、自分は何も知らなすぎる。
これまでにそんな上司に巡り合った経験は一度も無かったですし、自分が部下にそんなマネしたことも当然無く。

接客や接待での「おもてなし」ならば自分も経験はあります。
大企業で重役が視察に訪れる場面なら分かります。
しかし、こりゃないよなぁと。
この時代でもこんな仕来りがあるんだなぁと。

仕事のキツさや収入の低さとは別問題で、これでは業界から若年層が離れていくのが当然の流れに思えます。

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