その仕事に就くまで、具体的な仕事内容を知らなかったのは大きな問題だったと思います。
異業種の転職でも、自分はどんな仕事内容なのかこれまでだいたい察しはついていましたし、大ハズレも無かった記憶です。
ここ半年続けてきた仕事なのですが、昨日退職しています。
体力面等で白旗上げた感です。
職場に迷惑を掛けたくないので、業界の一般的な状況を以下に綴ろうかと。なるべく具体的な名称は避け。
土地の境界を調べるような仕事でした。
土地の売買時や相続時にこのような作業が必要だったりします。
該当の土地の境界を調べるには、一般的に土地の四隅に埋められたコンクリート杭を探す作業から始まります。
大きな土地もあれば小さな土地もあり。中には古い住宅密集地もあったりで、家や壁の隙間から人がどうにか入り込んで杭を探したり。
大きな体格の人には難しい作業ですし、壁や家から何か突き出していたら、服が裂けることも。ガスメーター等の凸りで頭をぶつけることなど日常で。
地上に顔を出している杭を見付けるのも面倒だったりするのですが、過去に盛土があった土地ですと、これが2mも土に埋まっているケースがあり。
特に地盤改良が必要だった地域では、この埋もれた杭を探すのに一日中穴を掘り続ける作業もあったりです。
穴掘りは基本的に電動ではない工具を使う肉体労働です。
住宅密集地の奥の杭で穴掘りは、作業スペースがそもそも無く、無理な姿勢が強いられて。
一日中とか数日かけてとか、この作業を続けるのはかなり体力を使います。筋トレが趣味な人でも一日せいぜい一時間程度かと思います。一日中休みも無くというのは次元が異なり。
また、盛土をした土地には大き目な石とかも紛れていて、一箇所掘るだけでも大変なパターンも。
余談ですが、半世紀前に盛土された土地を1m掘ったら当時のゴミが出土するケースもあったりでした。食料品を梱包したビニール袋とか風化もせずにそのまま出てきたりです。
数年前のニュースで、払い下げの土地の下にゴミが埋まっているから、その土地は格安で販売したというのがありました。あれはレアケースかと思っていたのですが、そんなに珍しい案件でもなさそうです。
自分は経験していないのですが、この境界を調べる対象が山や川の場合もあるそうで、これもかなりの重労働らしく。重い機材をそこまで運ぶだけでも大変でしょうに。
建築や土木に接するこの仕事なのですが、その業界の中では費用の取り分がかなり低いそうです。作業には精密な測定器を用いて、そのデータを基に図面を描いたり細かなミスも許されなかったり。
身体だけでなく、頭も使う仕事なのですが、業界の一般的な年収はかなり低いです。
無事に調査が終わり、境界を示した図面が出来上がったとしても、隣接する土地の所有者からサインを頂けない場合もあります。これもレアケースではなく、この場合は作業費を頂けずに終わることも。
けっこう苦労した現場に限って、こんなことがあったりです。
2mの穴を掘っても杭が見付かればまだ救われる部分がありますし、これが見付からなければ残念な想いも。
苦労した現場だったのにお隣さんが認めてくれずお金が入らない場合も。
この業界は若手に不人気らしく。実際に高齢者が多く、社員の平均年齢も高めです。六十代でも現役の方は多く、何十年もこの業界で生き残ってきたのは素直に尊敬に値します。
普通なら体力が持ちません。実際に離職率も高く、一週間とか一ヶ月早ければ数日で見切りをつける人も多く。
そんな中で生き残ってきた方は強靭な何かを持っていそうです。そして、高齢者ほど言葉遣いが荒かったり。
豊田真由子さんレベルの方とか、普通ではないでしょうか。怒鳴り散らされを毎日のように受けていたら、自信も失いがちです。
これが全て自分のミスだったらまだ仕方ないのですけれど、半分は怒鳴る上司の指示が不明確だったり、勘違いによるもので。高齢者ですとありがちです。
半年ちょっと続けた自分ですが、当初は身体中の関節が傷みました。入社から一ヶ月少々経った頃に連休があり、これに救われて関節痛はほぼ収まりました。
筋肉が付いてきたのはそれからだったと思います。体質もかなり代わり、凸っていた下っ腹もかなり引っ込みズボンのウエストサイズも5cm縮まり、体重も5kg落ちました。
健康的な仕事ではあったようです。しかし、これからの夏場は更に別の問題が待っています。自分は冬に向かう時期に入社したので助かっていた猛暑です。
職場は気遣いもあった様子で、入社当初から重労働はさせなかったです。だんだんと身体が出来上がってきてからの穴掘りでした。
感謝すべき点は多々ありました。ただ、異業種からやってくると、あまりに特殊な環境でした。
実際、何十年もこの仕事を続けている方は異業種経験がなかった方ばかりです。
「楽して生きろ」とまでは思いませんけれど、ここまで苦労して成果も少ないというのはとても残念で。
身体を壊してしまっては、ともかく次が無いのですから。
入社したての頃、現場へ移動中の車の中で同僚から言われた言葉を思い出しました。
「他でそれだけの経験を積んでいるなら、何もこの業界に入る必要無いのに。勿体ない。」と。
一人や二人からそう言われたのではなく、ほぼ全員からでした。
コロナ禍で他に転職先が簡単に見付からずの選択でもあったのですけれど、あの時言われた言葉の重みにやっと気付いたこの頃でした。
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