町の生活臭

一人暮らしを始めてから、ほとんどの生活圏は東京でした。
何故だか判らないのですが、自分は近所付き合いに恵まれていました。
幼少期に暮らしていた地域で、親切な御近所さんに恵まれていたからかも知れません。

大学時代に四年暮らしたワンルームマンションでも、普通ではあり得ないくらいの近所付き合いがあり。
たまたま隣りの部屋の女性が北海道出身で、電話も置けないくらい生活が苦しそうで。夜の仕事の一つ年下な女性、緊急の場面では自分の部屋の電話を借りに来たり。
交際相手の男性はほとんど紐の様な存在で、女性のお兄さんが部屋へ訪ねてくると、ベランダ伝いに自分の部屋に逃げ込んできたり。「イーヅカさん助けて!」と。
お兄さんは堅気の仕事で無さそうでしたが、妹さんが心配で時々訪ねてきていました。妹がお世話になっているとビール券まで頂いてしまったり。
年末年始に寂しくしていたところ、賑やかな隣の部屋から誘われたことも。綺麗な女性が集まっていたお酒の場、とても楽しかったです。パジャマ姿の写真も残っていたり。
他の部屋の方とも親しくしてもらえたので、卒業間近の大事件に巻き込まれた場面でも助け合えたりでした。

大学の卒業で会社の寮に引越す際も、二部屋隣りの女性の交際相手がエアコンの取り外しを手伝ってくれたり。エアコンを持ち帰る友人は「今時こんな付き合い珍しい」と呟いていたものの、確かにそうかも知れないと。

八年暮らした会社の寮でも、毎晩同僚の部屋で呑むか自分の部屋で一緒に呑むかでした。
まぁこれは当然だと思います。

十二年暮らした都心の下町も、風邪で寝込んでいたら御近所さんが煮込みうどんを届けてくれたり。
そして現在暮らしている柴又では、ベランダのフェンス越しに採れたての野菜をプレゼントしてくれる御近所さんが居たり。

都心の下町も柴又も、無意識に町の生活臭を選んでいたのかなぁと。
自分から何か働きかけたワケではなかったのですが、気付いたらそうなっていた様子です。
マヌケ面だからか、話し掛けやすい雰囲気はあるそうで。

しかし、この文章だけでは善人ぶった奴にしか思えんかと。
実際のところ、大学時代のあの部屋ではスケスケの薄着で隣りの女性がやってくると欲望を押さえ込むのに必至でしたし、「今夜は彼が居ないから遊びに来て」と言われると、理性を保てるか自信無く断ったりでした。
ハタチそこそこの男には刺激的過ぎまして。

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