グロリア

日産というかプリンスが嘗て製造していたセダンの一台にグロリアというモデルがありました。
プリンス発祥の車はスカイラインも含めて何故かどれも色気を感じたものです。
グロリアは女性の名前だったらしく。

学生時代に深夜放送でたまたま観た映画があります。
ハードボイルドなストーリーでしたが、ちぐはぐなコンビがちょっと不思議で。しかし、お笑いの要素は微塵も無く。
ちょっと寂れた集合住宅で波の無い日々を独り過ごしていた初老の女性。
嘗ては綺麗だったに違いない目元には隠せないシワも少なくなく。

そこで突然始まったドラマ。
同じフロアの住民がマフィア関連の金庫番、何かのイザコザガが始まったらしく。そこで託された小さな男の子と帳簿。
女性は子供など大嫌い。しかし、隣の部屋で間もなく銃撃戦。

巻き込まれてしまった女性は、ニューヨークの街を逃げ回る羽目に。
結婚も育児も経験の無い女性に、この懐かぬ男の子など面倒なお荷物でしかなく。
しかし、車でやって来たマフィアに見つかった寂れた街角。着いてきた子供の存在に気付かれ。
ここで咄嗟の母性反応。所持していた拳銃で何発もマフィアの車に。

益々窮地に追いやられる女性。そして、懐いてきてしまった男の子。
予備知識無く、吸い込まれた映画でした。
何というか、分かっていない小さな子を助けてしまう本能って、あると思います。特に、子を守る女性は無敵だとも。
最後に流れた作品名は「グロリア」でした。

自分もゴタゴタは嫌いなのですが、何故か巻き込まれてしまうと放っておけない性質です。
世の中、理と情の狭間で誰しも生きていると思います。しかし、イザとなった場面で情に流されがちでして。

あの作品をたまたま観てから数十年後、またしてもたまたま観ていた作品に、あの女性が登場していました。
痴呆症というかアルツハイマーで過去をほとんど失った女性役でした。
これがまた攻撃的で、若かりし頃の果物の様な面影は何処へで。
きみに読む物語」という作品。
恋した互いに若かりし頃の青年。この実直な姿には胸打たれます。
どちらも演じきったGena Rowlandsさん、凄い女優さんです。

検索したところ、映画「グロリア」で始まった隣の部屋とのストーリーは、コーヒーを借りにいった場面だった様です。
個人主義の合衆国でも、そんな隣人との付き合いがあったんだなぁと。
小津監督の「東京物語」でも、集合住宅で暮らすまだ美しい女性が、隣の部屋に何かの食材を借りに行った場面があったなぁと。
昔って、そんなもんだった様です。
古今東西問わず、これって大切だよなぁと。

今だったら、徒歩圏の24時間営業のお店でほとんど片付いてしまいます。
便利になったと思いますが。

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