ささやかな贈り物

夜間大学の一年次は、ともかく生活が苦しく、食費を削る日々でした。
幸いに昼間の勤め先も大学だったので、安い学食にありつけて。
しかし、それでも食費がきつく。

そんな中、隣の教務課のお姉さんと学食で一緒になる機会が。
一回り上の世代のお姉さんは、いつも笑顔にして可憐な乙女の雰囲気。こんなところに来るんだなぁと。
お姉さん:ねぇ〇〇君、一緒に頂かない?
SUKIYAKI:勿論です。
初めての会話、まさか自分のことを知っていたとは。

ガリガリに痩せた自分は普段と違い、ちょっと豪勢なメニューを選びました。
しかし、支払いの段階でお姉さんは「私が払うから」と。
その後に何を話したのか覚えていませんが、こんなに優しい女性が世の中には居るんだなぁと。

二年ほど経った頃、自分の生活もやっと軌道に乗っていました。
学費も食費もちゃんと払えていましたし、お風呂付の部屋で暮らせる立場にもなっていて。
暑い夏にエアコンだってちゃんとあるし。

年度末のある日、突然残念な知らせが。
あのお姉さんが、別のキャンパスに異動してしまうらしく。
何か、お返しをせねば。

職場の向かいの花屋さんに走りました。
一番美しかった赤い花を一輪注文。
SUKIYAKI:あの頃、生活が苦しかったんです。だから忘れていなくて。
お姉さん:あら、これ私にくれるの?

恥ずかしかったので、すぐにその場を去り。
その日の帰り道、教務課の別の女性がニコニコ笑顔で近付いてきました。
女性:お姉さんね、嬉しくて更衣室で泣いちゃってたのよ。
SUKIYAKI:えっ?

花の力って、凄いんだなぁと思いました。
一輪しか買えなかったのに。

どうしてこんなことを綴っているかというと、五輪の選手にブーケを贈ったところ、福島の放射能が心配との報道がありまして。
何とも残念な話です。相手の気持ちを何だと思っているのだか。
こんなリアクションがあるのか。何とも貧しい心の持ち主であろうか。

幼少期に異様な光景を目撃しています。
テレビで観たプロレスの試合だったのですが、試合前にリング上で美女から手渡された花束を、野蛮な選手はムシャムシャと食べ始めてしまい。
「なんだこれは?」原始人の様な見た目だったので、尚更驚きでした。
ともかく、未だ鮮明な光景でした。

ずっと後に知ったのですが、ボボ・ブラジル選手はヒール役に徹していたそうです。自ら異様な演出を選んでいたそうで。
この人は偉かったんだなぁと。正義の味方を立てる悪役に徹していて。
だいたい、プロレスなんて茶番劇くらいにしか思っていませんでした。あんなに容易く技を掛けられるものかと。
本気で闘っているなら、あの程度の怪我で済まないのだろうし。

しかし、そのプロレスも奥が深かった様です。
体格や体力の差が激しい女子プロレスですと、手加減しないことには相手の選手を壊してしまう危険もあったそうで。
これは花形選手だったマッハ文朱さんも同様だったそうです。
悪役に徹する対戦相手へのリスペクトも当然あったと思います。
(中には、閲覧注意な対極的な酷い例もあったりですが)

毎度のまとまりの無い話になってしまいました。
ともかく、相手への敬意とかお詫びとか感謝とかで言葉が浮かばないのであれば、お花を贈るのは悪い選択じゃないと思うんです。
まともな相手なら、気持ちはしっかり伝わると思うんです。

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