かなり昔に途中から観た映画がありました。最初から観たくて、その十年後くらいだったかにDVDも入手しています。
「心の旅」という作品です。SFやアクション作品で有名なハリソン・フォードが主演なのですが、この作品は全くそんなジャンルでは無く。
絶好調のエリート人生を送る弁護士が、突然の銃弾に倒れ、全ての記憶も言語さえも失うストーリーです。
悲劇に見舞われるまでは、弱者を潰す強者寄りの冷徹な弁護士。義理も人情も人としての優しさもあったものでなく。
仕事に限らず、家庭では小さな娘さんに対しても少ない言葉で服従を迫る冷徹さ。
しかし、主人公のヘンリーはたまたま立ち寄った煙草屋さんで強盗に二発の銃弾を浴びてしまいます。
一発は脳の額の辺り。もう一つは心臓辺りだったかな。
致命傷は心臓辺りの銃弾。血液の循環が止まったせいで脳の機能が停止。命は取り留めたものの、全ての記憶が消えてしまい。
華々しい学歴も職歴も実績も表向きは残っていますが、記憶も言語能力も失い、身体能力も失った状態で息を吹き返し。
ベッドでやっと目を覚ましたものの、口の端からはヨダレが。
あれだけカッコつけていた男だったのに。
全てのリハビリから再出発です。
機能回復の担当者は陽気な黒人のオッサン。このオッサンがとても素敵で。
言葉を忘れたどころか、発声さえも忘れたヘンリーに色んなアクションを起こします。しかし、全くリアクションが無く。
一人で食事を取れるようになったヘンリーの昼食に、この担当者はタバスコか何かの香辛料を山掛け。
そして、ヘンリーはあまりの辛さに言葉を発します。
「リッツ!」
自立歩行に励んだり、最低限の口頭会話を教えられたり。
しかし、相手は中身が赤ん坊の見た目は大人。
そして、退院。
自宅へ戻ったヘンリーは、綺麗な女性と疑いの目を持つ小さな女の子が待っていて。
慣れない日々のヘンリー。綺麗な奥さんは身体の関係な手ほどきも。
言葉の綴りを全て忘れたヘンリーを図書館に同行する娘さん。一緒に読書のハズが冗談ばかりのお父さんに呆れる始末。
ヘンリーは最低限の会話が出来ていたものの、識字が全く出来ていなかったことを知り。
英語のスペルを教える優しい娘さんと、それを少しずつ思い出して感動するヘンリー。
その後、職場に復帰したヘンリー。
過去の悪事な自分の仕事にも少しずつ気付き出し。
奥さんの過去の不倫に気付き、落ち込むヘンリー。
それに怒ったヘンリーに、本人の過去の不倫を打ち明ける同僚の若い女性。
上記のあらすじは、ちとアベコベかも知れません。
ともかく落ち込んだヘンリー宅に、あの陽気な機能回復の担当者が訪れます。
ヘンリーにとっては全てを教えてくれた親でもあり、義務教育の優しい担任教師でもあり。
担当者は、ヘンリーの自宅で味わった高級なビールに幸せを伝えたり。
担当者は、どうしていまこの仕事をしているのか、過去の栄光と挫折を語ったり。
あのとき、終わりの音が聴こえたんだ。
何処かの時点で、ヘンリーは犬を飼い始めたり。
「お座り」をなかなか覚えてくれない、容量の悪い子犬。
しかし、ベッドの中で落ち込むヘンリーに、自らお座りしてくれたり。
優等生が集まる学校に進学した娘さん。
チャペルだったかの集合場所でつまらない講義を受ける娘さん。
娘さんは監獄の様な学校で、寂しい日々。
そこへ一匹の子犬がやってきて。
沢山の生徒がいる中、娘さんを誘うように子犬は立ち止まり。
お父さんもお母さんも、こんなところから脱出しようよと子犬を連れて。
尻尾をフリフリな子犬の後をトボトボ歩く三人だったかな。
(このDVDは親しかった友人に貸したままで、うろ覚えの記事です。コロナで再会出来ず)
ある程度順調な生活が目の前にあった方は多いと思います。
このコロナで、全ての計算が狂った方は少数派とも思います。
本当に大切なものを考える時間なのかもしれません。
勢いよい時期にチヤホヤされる人は多いと思います。
得体の知れない沼の底に落ちるしかない立場の人に、優しい一声掛けてくれる人って、少ないと思います。
ただ、そんな人が僅かにいるだけでも、幸せだと思います。
自分らしく生きてきた結果です。
鴨川ツバメさんという作家は、全盛期に安く使われ、秋田書房の稼ぎ頭だったとも思います。
しかし、そこに神経や集中力を全投入した作品の後半は、ほぼ廃人。
さっさと連載を終わらせてほしいと、分かる人にしか分からない手抜きの作画。
その後は沼の底に背中が当たるまで、最悪な日々を送っていたそうです。
「消えた漫画家」というサブカルチャーな本で、二十年ちょっと前に読んでいました。
このコロナというのは、誰しも究極の選択を迫られているようでもあります。
去る人と、見捨てられない人というか長い付き合いというか。
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