奈良で単車三台による事故があり八人が死傷との事件、早朝から衝撃的でした。
自分は三十四年間単車に乗っており、単車の事故は他人事でなく。
どうしてそうなってしまったのか、朝から気になっていました。
事故から少しずつ状況が伝えられています。
原付スクーター二台と大型バイク一台で計八人乗り。全員が十代の若者。
これだけで無茶な運転をしていたのが察せられますが、スクーター一台と大型バイク一台の損傷具合が半端なく。
特に大型バイクは原型を留めておらず、フロントフォークも引き千切られていて。
いったい、どれだけの速度を出していたのだか。
大型バイク乗りで無茶な運転をしているの、自分は観たこと無いんですよ。
凄まじいパワーを秘めた乗り物なので、自制心が無ければ扱えないシロモノです。
乗り手の多くは模範的な運転を志していて、単車のメリットでもある渋滞時のすり抜けさえ滅多にしていなくて。
だいたい、まともなライダーがまとまって走るには、似たような性能の単車で走行するのが普通で。例外的なツーリングは一番遅い車体にペースを合わすのが普通で。
それが何故?とも思えたのですが、八人の中で大型自動二輪の免許を所有していたのは一人も居なかったそうです。
これは技量的にも自制心的にも論外な組み合わせだったのかなぁと。
自分は高校一年の冬休みに原付の免許を取得して、夏に50㏄のギアー付きを入手しています。
当時、一度だけカワサキの650㏄を大きな駐車場で運転させてもらったことがあったのですが、50㏄と同じ感覚でクラッチを繋げたところ重たく大きな車体はいきなりウイリー。
これは死ぬかと思いました。タイヤは二つでも全く別の乗り物で、50mも走る前にすぐに返却しました。
小排気量の単車はコツを相当掴まないとウイリー何て出来ないのですが、大排気量は重い車体にも関わらずいとも簡単にウイリーでした。パワーの違いが顕著でした。
ともかく、借りものを壊さないように地上で停めるのが必死だった短距離でした。
大学時代に中型免許を取り、それ以降はそれ以上の免許を必要としていません。
自分が扱うには250㏄辺りが丁度良くて。250㏄でもエンジンの不調で動かなくなると押して歩くだけで相当な労力が必要ですし、大きいほど取り回しが面倒で。(現在所有するForza siも200㎏の車体は駐車スペースから移動するだけで相当重たい)
100㏄のVespaは年中故障していたものの、車体が軽かったので自宅まで押して帰った事もしばしば。
125㏄のPCXがバッテリー上がりしてしまった際は、近くのガソリンスタンドまでひたすら上り坂で、恐ろしく汗をかいた思い出も。
と、故障したような場面ばかりの話ですが、他にも経験はあります。
単車の事故現場に幾度も遭遇していて。
支笏湖方面の急カーブで転倒したVMaxとか、駿河台下のカーブで転倒したトレールとか、首都高上野線のカーブで転倒した大型のスポーツモデルとか他にも色々。
ほとんどはカーブを曲がり切れない事故でした。だいたいは想定外の抜けにくいカーブでバランスを崩すパターンです。
逆に言うと、走り慣れた見通しの良い直線であれば貰い事故でない限りは事故の確率は低く。それで事故るのは相当無謀な運転で。貰い事故だけは運の悪さで単車は簡単に死ねます。
そんな事故に遭遇する度に自制心とかが鍛えられるワケで。これは安全運転の基本かと。
カーブを高速で抜ける緊張感が面白いのも分かりますが、走り慣れた道であっても路面が昨日と同じコンディションの保証など何処にも無く。ダンプカーが砂を落としているかも知れないし、舗装がえぐれているかも知れないし。
公道はサーキットでは無いのですから。
結局のところ、経験値を積まないと単車の恐ろしさはよく分からないかと。身内が単車の事故で身体を壊したような経験でもなければ、気付かないままかと。
単車の免許を取得するには、最初から事故現場の映像でも見せてあげた方が本人の為になるくらいに思っています。
だって、簡単に死ねるのですから。
過去に楽しんでいたスキーが良い経験かも知れません。倒れるにしても山側に倒れるか谷側に倒れるかで復活度が大きく異なり。
フェールセーフ理論の基本というか。失敗が前提としたら、安全側を取る考え方です。
スキーでスピードを出すだけならひたすら直滑降だと思います。しかし、真っ直ぐなだけのゲレンデなど無いですし、それを斜面の状況によってコントロールするなら制動も必要で。それを臨機応変にこなすのが技量かと。
危ないかも?と思えたら何時でも止まれる体制が重要で。
この「危ないかも?」の感覚がズレていると事故に直結なのかなぁと。
今回の奈良の事故、まだ分からないバックグラウンドも多いのですが、若気の至りな要素はあると思いますし、自分が当初からずっと模範的なライダーだったとは思っておらず、全面的な否定が出来ないんです。(誰しも赤信号に近い黄信号で交差点に入ってしまったことや、一時停止を忘れてしまう場面はあると思いますし)
一部の暴走族のような周りに迷惑をかける前提での走行は、この時代にほとんど遭遇する機会も無く。(昔は確かに見掛けましたが、あれだけはカッコイイとも思えず真似するつもりも無く)
ちょっと調子に乗るくらいの出来事は単車に限らず誰でもあるかと思うんです。特に限界を知らない若さなら。(しかし、公道で三人乗りで信号無視して、とんでもない速度というのは弁解の余地無く、暴走族と変わらないのかも知れません。その辺が今日の時点で分からず)
痛い思いを幾度も経験して、包容力のある大人になれるのって、説得力もあるかと。自分は痛い思いを少しずつ経験していて。
「お前も同じドジ踏んだのか?」って、妙な親近感もあり。
単車の魅力を知るなら、ちょっとした故障ぐらい自分で治せる技量も必要かと思っています。
洗車だけでも良いと思うんです。好きで入手した単車、ちゃんと洗うだけでまた美しく、惚れ直せて。
高校時代に初めて入手したAR50は安い中古で、過去にはシリンダーの焼き付きも疑われて、タンク周りの錆もジワジワ進行していて。せめて見た目だけでもみすぼらしくないように洗車や補修を心掛けていました。(構造が単純だったので、マフラーというかチャンバーの詰まりに気付いたら、かなり復活したり)
愛着があったのなら、無茶な運転など出来ないのになぁとも。
最後に、
単車でタンデム(二人乗り)はかなり面倒です。曲がらない止まらないと、単車のメリット半減で。そして、運転手の疲労は三倍以上な感覚です。ともかく疲れるので長距離など避けたく。なので三人乗りなど物理的にも論外で、デパート屋上の遊具の様な性能でも無ければ曲芸の要素。
JICAの技術支援でアフリカ(カメルーン)へ伺った際は、タクシーと呼ばれる乗り物の多くが単車で、三人乗りは当たり前でした。時として四人乗りも。
国道らしき道は舗装されていたものの、そこら中に陥没があり、その穴を単車が通過すると車体ごと前転した同乗者が特に吹っ飛ばされるらしく。
JICAで活躍されていた利他的な若者、他に安い移動手段が無く単車のタクシーを常用していたそうです。
自分が訪れた前年にそれで他界していたそうです。悲しいことに、それがニュースにもなっておらず。
追記:
既に無駄にダラダラ綴ってしまった上での追記で恐縮です。
事故翌日の時点でまとめサイトが立ち上がっていました。真偽のほどは分かりませんが、世論のバッシングは避けられない状況だった様子です。
弁解も擁護も出来ないというか。写真を見る限り、単車も人も何処にでも居そうなタイプで、かつての暴走族的な雰囲気ではありませんでした。
映画「さらば青春の光」に近い破滅型だったのかなぁ。
自分の高校大学時代は単車の仲間にも恵まれていた感です。暴走行為をするような仲間など居ませんでしたし、安心して単車を貸し借り出来る間柄でした。
偶然なのか皆孤独を愛すような部分があって、一緒にツーリングみたいな場面はほとんど無く。思い返すと片岡義男の作品に登場しそうな孤独感が皆漂っていて。
社会人になって数年後、会社の同僚達とオフロードの単車で山道を一緒に走ったのが、唯一のツーリング仲間だったかも知れません。
ともかく、類友みたいなのはありそうで、自分の周りでは単車で大事故を起こしたような奴は誰もおりません。(上記のオフロード仲間の一人が林道でコケて入院した程度)
単車が危ないという一面は実際あると思いますが、単車が勝手に走るワケではなく運転手あっての話です。
合衆国の銃規制も似ているのかなぁと思えたり。銃が勝手に発射するワケではなく撃つ人があっての話で。
扱う側が危険な人であれば、調理器具さえ凶器になってしまうかと。
ほとんどのまともなライダーは「一緒にしないでくれ」と思えてしまう今回の事故だったかと。
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