駅前の風景


柴又駅の改札を出てすぐの場所には小さな地蔵尊があり、そこには一時期猫が三匹暮らしていました。
それは二年前だったと思います。特に熱帯夜の猫は駅前の広場を陣取って、石畳にへばり付いて放熱している姿が何とも可愛く。
しかし、一匹ずつ居なくなっていました。
一番元気が良かった奴は病気で亡くなってしまったそうです。次に元気だった奴は引き取られていったそうです。
そして、年中鼻水垂れてた茶色い奴は案外しぶとく生き延びていました。

その茶色、夏場は呼吸が苦しそうでダースベイダーの様な音を出しつつ。
どの猫も、ちゃんと去勢されていて調子が悪いときは地元の方々が病院へ連れて行っていたのですが、この茶色だけは呼吸器系の問題が何故か続いていました。
冬場はいつもの女性が夜になると抱きかかえて暖を取ったり布団を用意してあげたり、まぁ至れり尽くせりの状況でした。

ともかく、夜になれば必ずそこに居た猫です。
しかし、今年に入ってからか、全く見かけなくなりました。
宝くじ売り場の裏辺りに飼い主が居たとも聴いています。そこで暮らす高齢者が飼育を半ば放棄してしまったから、この地蔵尊で暮らすようになったとも聴いています。
その宝くじ売り場の裏に居ないのかちょっと覗いてみると、真新しい建物が。
これは、昼間に過ごす場所が無くなってしまったということなのかな?
まぁ、噂と推測ベースの話なのですが。

それでも、深夜にコンビニへ向かう際は必ず様子を観に寄っていました。
お地蔵さんの裏に居ないか?と。
手付かずの餌と水が用意されているだけでした。
面倒見の良い誰かが、気にされている様子です。

しかし、やはり今宵も手付かずのままでした。
ずっと置きっぱなしの餌ではなく、それが無い時もあり。
駅員さんも時々様子見に来ていた猫です。しかし、駅前の再開発で雰囲気も随分と変わってしまい。

どんな理由で居なくなったのか分かりませんが、ともかく猫は居なくなったんだなぁと。
そういえば、改札口のツバメも今年は観ていないし。
ツバメが子育てしている際は、頭上注意のパイロンが改札のど真ん中に置かれていたものでした。

この町が好きだった理由の一つは、駅前で呑気に暮らす猫だったり、毎年やってくるツバメだったりでした。
今時上手く共存しているなぁと。
そこに、人の優しさも感じられたりでした。

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